人との会話が困難で、気持ちを伝えることができない自閉症者の心の声を記した「自閉症の僕が跳びはねる理由」、言葉、対人関係、感覚の違い、興味や関心ごと、「どうしてそういう行動をとってしまうのか」などが当事者本人の声で記されており、この本を読むことで「謎だらけ」の自閉の世界へ少し足を踏み入れることができた。
なかでも、短編小説「側にいるから」は自閉症者の気持ちをわかりやすく伝えている。この話は、交通事故で親より先に亡くなった子供の主人公目線で物語が進んでいく。亡くなったことに気づいた子供が、天国と生きていた世界を行ききし、両親の悲しみにふける姿を見て、子供も毎日のように両親のことを考える。両親の悲しみは生きている限り続くが、子供もその姿を見ても何もしてあげられない。自分の愛する人に気持ちを伝えられないことが、どんなに辛く悲しいことか、しかし生きている限りその悲しみを乗り越えなければならない。相手がどう思っているのかと考えるのは想像ではあるが、優しいことだとしみじみと感じた。最後に私の両親が過去に行ったであろう、「幸福ゆき」の切符が出てきたので、皆さんにお裾分けしたい。