食べられなくなると、胃ろう(経管栄養)や点滴で栄養を補給することがある。
口から食事をしなければ口の中は汚れないと思われがちだが、
実はまったく逆で、口からまったく食べられなくなると、細菌数が増加する。
もっとも代表的な死亡原因は誤嚥性肺炎。
知らず知らずのうちに唾液(細菌)が肺に入り込み引き起こす肺炎で、
「肺炎の発症率」は増加し続けており、高齢者の肺炎の多くが誤嚥性肺炎である。
口の中は37度ほどに保たれ、唾液によって潤い、
食べかすが停滞しやすいことから、細菌(常在菌)がとても繁殖しやすい。
歯垢(しこう)(デンタルプラーク)の70~80%は細菌、
20~30%が多糖体と唾液中のタンパクで構成されており、
歯垢1ミリグラム中に数億もの細菌がいる。
全身の中でも、口腔内の細菌数は非常に多く、
便と同じくらいのレベルといわれている。
虫歯は、糖分によって増殖した細菌(デンタルプラーク)が歯を溶かすことで起こり、
歯周病は細菌が歯周ポケットで増殖して炎症を起こし、
歯を支える骨を溶かすことで歯がぐらぐらになる。
つまり、虫歯も歯周病も細菌感染症で、
重度になると細菌が血液を通して全身に悪影響を及ぼすことがある。
例えば、心臓病や糖尿病、低体重児出産、誤嚥性肺炎などが関連する。
だからこそ、全身の健康のためには口腔ケアは大切である。
口腔内細菌のもう一つの特徴として、
細菌が歯の表面に堆積し続けるとバイオフィルムという強固な膜を作る。
問題は、バイオフィルムはうがいや薬だけでは除去するのが難しいという点、
例えば、台所の流しの三角コーナーに生ごみを入れておくと
ヌルヌルとした汚れが付く、水道水の水を強くかけてもヌメリは取れない。
タワシでこするとヌメリは取れる。
つまり除去するには、歯と口の清掃、歯磨きや口腔ケアが不可欠である。
口腔ケアは、虫歯や歯周病などを予防するのみならず、
飲み込む機能や認知機能などを高め、
さらに誤嚥性肺炎の発症を抑えるなど、全身の病気の予防に関わる。
咀嚼(そしゃく)(噛むこと)は脳に刺激を与え、
脳の血流を増加させることがわかっており、
歯がなくても「噛める入れ歯」を作ってもらうことも大切である。
口から食べることを継続していれば、口の中の細菌は正常な状態を維持する。
このことから、胃ろうなど経管栄養や点滴で栄養を補給する状態になっても、
可能な場合は、少量でも口からの食事と口腔ケアを継続することが大切である。
口腔ケア前 口腔ケア後