サン・テグジュペリの「星の王子さま」を読まれたことはあるだろうか?
小さな子供が読む童話というイメージをもっていたが、
大人へ向けてのメッセージに満ち溢れ、
人間にとって大切な事柄が随所にちりばめられている。
大人になってからもう一度読み直してみると意外と考えさせられることがあった。
「変な大人」「ダメな大人」の典型例として、
王様、うぬぼれ男、大酒飲み、ビジネスマン、地理学者など、
王子は彼らを訪ねて噛み合わない問答を交わしていく滑稽な話は子供向けで笑える。
いくつかの星を訪れいろんな大人に出会うが、
それによって自分を変えそこで生きていけるような強さを身につけることもなく、
王子はどこまでも純粋な子供のまま。
小説の中で王子は狐に「肝心なことは、目に見えないんだ」と教えられる。
目に映るものが必ずしも真実ではなく、心の目で見ること、
子供のような純粋な目で見ることが大切であることをこの小説は伝えている。
人は、正しくものを見ているつもりでも、
自己中心的で自分勝手な見方でしかものごとを見ず、
何が「本当」で何が「偽り」なのかを見極めることもできない。
現代社会に生きる我々は、目に見えるものばかりに心を奪われ、
目に見えない多くのものに支えられていることに気付かなくなってしまっている。
ここに書かれているのは、生きることへのままならさ、
人は決して、自分の思うようには生きられない。
時には翻弄され、流されながらも己を信じて生きていくしかない、
王子は、自ら死を選ぶが、それは肉体における死であって、魂の死滅ではない。
物の豊かさではなく、心の豊かさ、心の糧を大切にすべきだと改めて感じた。